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46.ファルーク・ドーンディ『メッカに行こうよ』、Farrukh Dhondy, Come to Mecca and Other Stories, first published in London 1978 by Fontana Lions.

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マルチ・エスニックな移民社会における
フェスティバルが最高潮に達しようとするとき
警官隊の介入があり衝突へと発展しゆく
警官にはがい絞めにあった衣装担当のジョジョは
自分にかまわずに逃げろ
とカーニバル・クイーンの少女に叫ぶ
衣装の羽根をひろげ
蝶となって飛んでゆけと
 




  
    装丁のいい本はなかみも大抵いい、と言っていたのは誰だったか。この『メッカに行こうよ』も、表紙のイラストがなかなかカッコイイ。そしてなかみもすごく良かった。マルチ・エスニックなイースト・エンド(オブ・ロンドン)を舞台に、少年・娘・青年の生活とストラッグルとはかない恋に、胸がキュンとなった。ところで、タイトルの「メッカに行こうよ」だが、勘のいい人は何となく想像しているように、メッカとはブリック・レインにあるダンスホールのことだ。そう言うと、この短篇集のイメージが沸いてくるだろう。

   この作家を何で知ったのだろう。すっかり忘れてしまった。どうにか思いだしてみると、おそらくアミタヴァ・クマールの本に紹介されていたんじゃないだろうか。というのは、この本が、おもに英国に流出したベンガル人の物語だからだ。そう思ったのは、クマールの本がいつも海外に流出した南アジアの人々を主題にしているからだ。

   この本は少年むけ読み物だ。
   百数十ページのこぶりの本のなかに六篇の短編小説が入っている。さまざまなギャップ-常識や文化やジェンダーなどについて-が散りばめられていて楽しい。
   ストライキをしでかす少年は、英国人の女性記者から取材をうける。彼女は、少年を組合のミーテイングに誘う。労働運動に目覚めさせようとしているのだろう。しかし、めかし込んだ少年は、女性記者をデートに誘おうとするのだ。ダンスホール「メッカ」にだ。
   あるいはまた詩心がある教師との交流を描いた短編では、教師はワーズワースやT. S.エリオットやらの詩の素晴らしさを称揚しようとする。しかし、少年が書いた詩は、バビロン(摩都)とかジャー(神)とかのレゲーのキーワードを用いた詩なのだ。
   数え上げれば切がないギャップの例に出くわす。異文化の接触による火花が散るのは、僕には何とも楽しい。しかし、この少年むけ短篇集がそれほど理解しやすいかというとそうではない。イースト・エンドの住人にとってはおそらくあたりまえのことが僕にはそれほど良く理解できないからだ。たとえば詩を教える教師は「ハンドバッグ」をもっていて、生徒たちはそれに注意をむける。「ハンドバッグ」が、同性愛者のサインにも思えるし、そうでないのかも知れない。あるいは、コミュニティのカーニバルを扱った短編では、カーニバル・クイーンになる娘の母親は、Mistressと言われている。通ってくるダンナがいるのだからやはり二号さんということになるのだろうが、僕にはピンとこない。

   「フリーディナーズ」Free Dinnersという短篇も、このフリーディナーズというのが良く分からない。クラスでは僕とブラックのロレーヌだけがこのフリーディナーにあずかる。それは極貧の象徴なのか、とも思う。しかし、ロレーヌの父親は、copper(警官)で、公務員であれば極貧ということはないとおもうのだけれども、copperにはもっと違う意味があるようにも考えられる。
   分からないことが多いのだけれども、「フリーディナーズ」を僕は堪能した。悲しい物語だ。貧困とつつましい幸福と心が通いだす二人の愛を僕は感じた。ダンスがうまい恋人がストリッパーに、やがて街娼になってゆくのは、悲惨というよりも運命のようなのだ。人の幸福と不幸は、初めから運命づけられているのかも知れない、と思ったのだ。

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ファルーク・ドーンディ
1944年パルシー教徒の家系に属するものとしてプネーに生まれる 
プネー大学を卒業、スカラシップを得て英国ケンブリッジに留学
以降、英国に居住
自身、反人種差別の活動家であり、また左派知識人との強い絆をもつ一方
V. S. ナイポールとも仲がいい、とのこと
児童書、教科書、伝記、劇作、そして映画およびTVの台本と
幅広い創作活動を広げている

   著者にとっては二作目のこの短篇集は、インド出身の著者のインドらしさを色濃く引きずっている。そのインド性と移民社会の英国との衝突するときに発する火花が僕には面白い。しかし、どうなんだろう、時がたてば、故郷のことも固定した記憶となって薄まってゆくはずだ。その時、著者のものする小説はどんな仕方で英国の現実と係りあってゆくのだろうか。・・・ファルークの本を読み続けよう、と僕は思う。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

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August Party

Author:August Party
元気な南アジアの作家達をともに発掘してゆきましょう。気分でその他のジャンルも取りあげたい。
画、舟越直木作“微笑む少年”2009年

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